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東京地方裁判所 昭和43年(ワ)3311号 判決 1970年1月26日

主文

被告趙順点は原告に対し、別紙第二目録記載の建物を収去して同第一目録記載の土地を明渡し、かつ、金三八〇、八三五円および昭和四三年三月一日から右土地明渡ずみまで月額金一〇、八八一円の割合による金員を支払え。

被告趙順点を除く爾余の被告らは原告に対し、別紙第二目録記載の建物のうち同目録占有関係欄表示のとおりの各占有部分から退去して、別紙第一目録記載の土地を明渡せ。

訴訟費用は被告らの負担とする。

この判決は、右第一項の金員支払の部分に限り仮に執行することができる。

事実

第一、原告訴訟代理人は主文第一ないし第三項と同旨の判決ならびに仮執行の宣言を求め、その請求原因として

一、別紙第一目録記載の土地(以下本件土地という)は、同目録表示のとおり第八号埋立地の一部分であるが、右埋立地は、大正一三年六月二五日東京市(昭和一八年七月一日以降原告がその地位を承継した)が公有水面埋立法第二条の規定による公有水面埋立の免許を受け、その埋立をなし、原告が昭和四二年八月二九日同法第二二条および第二四条の規定により竣功認可を受けて、その土地所有権を取得したものである。

二、被告趙順点は別紙第二目録記載の建物(以下本件建物という)を所有し、原告に対する何らの権原なく昭和三九年末頃から本件土地を占有している。

その余の被告らは、本件建物の一部をそれぞれ別紙第二目録中占有関係欄記載のとおり各占有し、原告に対する何らの権原なく本件土地を占有している。

三、よつて、原告は本件土地の所有権(埋立工事竣功認可前は土地使用権)に基づき被告趙順点に対し、本件建物を収去して本件土地の明渡を求め、かつ、被告が本件土地の不法占拠後である昭和四〇年四月一日から昭和四三年二月末日までの本件土地貸付料相当額たる月額金一〇、八八一円(一平方メートル当り八円五三銭)の割合による合計金三八〇、八三五円および同年三月一日から本件土地明渡ずみまで前同月額の割合による損害金の支払を求め、同被告を除く爾余の被告らに対し、本件建物のうち別紙第二目録中の占有関係欄記載のとおりの各占有部分から退去して本件土地の明渡を求むるため本訴請求に及んだ。

と述べ、被告趙順点同菊池金五郎の主張はすべて否認すると述べた。

第二、被告趙順点同菊池金五郎訴訟代理人は「原告の請求を棄却する、訴訟費用は原告の負担とする」との判決を求め、答弁として、請求原因事実中一は知らない同二のうち本件土地を無権原で占有しているとの点は否認し、その余は認める。同三は争うと述べ、主張としてつぎのとおり述べた。

一、昭和二二年頃原告と訴外引揚者連盟代表者加藤某との間に本件土地を含む埋立地の埋立工事をなし、完成したときは無償で同埋立地を使用させる旨の諾成的使用貸借契約が成立し、同連盟において埋立工事に着手し、昭和二五年三月頃訴外長尾竹次が右訴外連盟から同工事を引継ぎ完成し、昭和三五年三月頃原告からその引渡しを受けたものであるが、被告趙順点は右訴外人の承継人として、本件土地を正権原に基いて使用しているものである。

二、仮に右主張が認められないとしても、原告は右訴外両名が埋立した後、埋立した者又は埋立関係者に埋立地を使用させ払下げることを約していたものであるから、訴外長尾の承継人たる被告は本件土地の払下げを受けるまで、これを無償で使用しうる正当な権原を有するものである。

三、原告は公有水面埋立法第二三条を根拠として、昭和四〇年四月一日以降の本件土地に対する損害金を請求するが、同条の竣功認可前の埋立地を使用するというのは、当該埋立地を埋立工事遂行のためのみに使用することができることをいうものであつて、直接支配する権利を有するものではない。従つて、原告が所有権に準ずる権利に基いて損害金の請求をなしうるものではない。

被告趙順点同菊池金五郎を除く爾余の被告らは、いづれも「原告の請求を棄却する」との判決を求め、請求原因事実中一は知らない同二のうち各被告らが無権原で本件土地を占有使用しているとの点は否認しその余は認める同三は争うと述べ、被告趙順点安同任永吉は、同被告両名は夫婦であり、被告趙順安は被告趙順点の妹で、昭和四二年頃から夫婦で主張建物部分に居住しているものであると述べ、被告高橋主一は、昭和三九年一一月頃から、賃料一カ月五、〇〇〇円の期間の定めなく被告趙順点から主張の建物部分を適法に賃借しているものであると述べ、被告桜井竜夫は、昭和三七年四月頃被告趙順点の母姜牛守から期間の定めなく主張建物部分を賃借しているものであると各述べた。

第三、証拠(省略)

第一目録

東京都江東区深川枝川町二丁目

九番地先第八号埋立地

一、竣功埋立地 一二七五、六七平方メートル

(別添図面一および二の赤線で囲まれた部分)

第二目録

右同所同番地所在

一、木造亜鉛メツキ鋼板葺平家建居宅一棟

床面積 一七五、〇七平方メートル

(別添図面二の青線で囲まれた建物)

右附属建物

一、木造亜鉛メツキ鋼板葺平家建便所一棟

床面積 三、二四平方メートル

(別添図面二の青線で囲まれた建物)

占有関係

<省略>

別添図面(省略)

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